前回のつづきですが、7月30日伊藤耕三先生にご講義いただきました。
テーマは「環動高分子」です。
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講義を受ける学生ら |
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伊藤先生 |
ここでいうところの「環動高分子」とは、直鎖状高分子を環状分子に通し、末端を封止することで環を外れなくした「ポリロタキサン」を指します。1992年に大阪大学、原田明教授により報告されました。伊藤先生は、たまたま乗り合わせた飛行機の中で原田先生より直接紹介されたことがきっかけでこの分子に取り組むようになったそうです。
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ポリロタキサンの合成
原田研「超分子科学研究室」より拝借しました |
A. Harada, J. Li, and M. Kamachi
"The Molecular Necklace: A Rotaxane Containing Many Threaded α-Cyclodextrins"
Nature, 1992, 356 (6367), 325-327.
A. Harada, and M. Kamachi
“Complex Formation between α-Cyclodextrin and Poly(ethylene glycol)”
Macromolecules, 1990, 23 (10), 2821-2823.
そのうちに輪成分(シクロデキストリン)上にのみ反応性の官能基があることに気が付き、多官能性の架橋基を用いたところ、出来上がったのが環動ゲルです。
こいつのすごいところは「架橋点が移動することで、ポリマーのエントロピーと環のエントロピーとが交換する」点です。
つまりゲルが延伸されると一時的に内部のポリマー鎖も引き伸ばされるのですが、架橋点が可動なのでポリマー鎖は元の状態にもどることができます。よって応力が局在せず、全体に均等に力がかかるので非常に大きな破断のびを示します。
そしてこのとき、架橋されていない環がポリマー鎖の端に集められエントロピー的に不利な状況になります。よって子のエントロピーの解消が駆動力となってゲルは瞬時に元の形状を取り戻すことができます。
このように伊藤先生は環同士を架橋するという単純な手法で、従来にない材料を世に生み出されました。
まだまだ特筆すべきことがあるのですが、あとはe-learning教材として後ほど示すことにします。
こうご期待。
最後に懇親会の様子です。
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懇親会の企画&実行人 こまっちゃん |
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真剣に聞いている風 |
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近いっ・・ちかいっ・・ |
私共のような一学生にも気さくに付き合っていただきました。どうもありがとうございました。